今はまだ、折れた翼でも
淡いクリーム色のカーディガンを羽織って、望くんと歩き出す。

外は、春の気配でいっぱいだった。

柔らかく吹く暖かい風。さわさわと揺れる木々。優雅な鳥のさえずり。



「私、朝が好きなんだ。春も。新しいことが始まるみたいで、わくわくして」

「……俺も。映茉のおかげで、好きになれた」

「そっかぁ」



なんだか、心がぽかぽかする。

ちらりと横を見上げてみれば、望くんが微笑んでいた。

つられて、私も笑顔になる。


こんな毎日が、ずっと続いたらなと思う。

でも続けるには、その想いと努力が必要なんだって、私は知っている。





「わあっ、すごい!」



原っぱへ繋がる森に囲まれた細い道を抜けると、視界が開ける。

目の前には、たくさんの満開の桜があった。

いつもの緑の足元は、ピンク色でいっぱい。


まるで桜の雨みたいに、ひらひらと花びらが降ってくる。



「映茉、楽しそうだな」

「あはは。ごめんね、私ばっかりはしゃいじゃって……。というか、望くんは近くだからいつも見てるのに、さそっちゃったりして申し訳ないよ」



私が謝ると、望くんが私に近づいて優しく抱きしめてくれる。

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