今はまだ、折れた翼でも
「一人で見るのと映茉と一緒に見るのとじゃ、全然違うし」

「そうかなぁ。でも、私、望くんと見られてうれしいよ」



そっと望くんの腰に手を回す。

暖かくて、幸せだ。



「俺も。映茉と見られて、うれしい」



私たちはしばらくしてから、腰に手を回したままゆっくりと離れる。

大切で、大好きな人が隣にいてくれる。

それは奇跡。そしてこれ以上ないほどの幸せ。



「映茉」

「どうしたの?望くん」


「もし、俺たちに翼が生えてて、それが飛べないくらい折れていたとしたら。映茉ならどうするのか、聞きたいと思って」



真剣な色をした瞳が、私の目をまっすぐ見つめる。

……もし、翼が生えていて。

空も飛べないくらい、折れていたとしたら。


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