今はまだ、折れた翼でも



「……こいつは、ここに泊まるのか?」



箸を置く音が、二つ分耳に入る。

晃成くんは、こちらをじっと見て言った。正確には白岩くんのほうだけれど。

しん、と一瞬にして静まり返るリビング。


五秒、いや十秒という感覚的にはとても長いと思われる沈黙を破ったのは、お母さんだった。



「そりゃ、ご飯だけ食べてもらってそのあと危険な雨の中ばいば〜い、なんてできるわけないじゃない。それに、ひどい怪我をしているし」



「白岩くんがよければだけど」と最後に付け足す。

たしかに白岩くんはけっこうな怪我をしていて、加えて雨もすごい。


……それにさっき自分で白岩くんに、出ていくなって言ったし。



「まあ、怪我をしているの。それは大変ねぇ」

「痛くないのかぁ?」



ついさっきまで笑顔だったおばあちゃんとおじいちゃんも、心配そうな表情で口々にそう言う。

私だって心配だ。……それに、こうなったのには、なにか理由があると思うし。

それを探ろうとまでは思わないけど、とにかく心配なのだ。



「じゃあ、仮に泊まるとして、部屋はあるのか?」



晃成くんがお母さんの方を見て問いかける。
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