今はまだ、折れた翼でも

そしたら晃成くんは身体を起こして座り直してから、思いがけない言葉を口にした。



「それ、いろいろ置いたの兄貴だよ。光のほう」

「え?」



光さんが、あの部屋に荷物を置いたってこと?

光さんは、言う通り晃成くんのお兄さん。つまり私の叔父。
今はたしか36歳で、男女一人ずつ幼稚園児のお子さんがいた気がする。

でも光さんたち家族はここに住んでいるわけではなく、隣の市に住んでるけど……。



「光兄ちゃんって昔から収集癖っつうか、ものとか捨てらんない人なんだよねー。そんで、自分たちの住んでるマンションの物置に入らなくなったから空いてる優太郎の部屋に置かせてほしいって言ってきたんだよ」



それなら納得……とは、ならないような気もするけれど……。

とりあえず、原因が分かってよかった。



「物置にしてんのばれたくないからって、外出中狙って置きに来たらしくて。例えば、映茉たちが旅行行ってるときとかさ。最後に来たのは半年前とかだったか」

「そう、なんだ……。あの部屋って、勝手に片づけちゃだめだよね。やっぱり」



光さんのものとなると、勝手に捨てるわけにいかなくなる。本人には今すぐ会えるわけじゃないし……。
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