今はまだ、折れた翼でも
そうすると、白岩くんの泊まる部屋がなくなってしまう。
白岩くんが夕飯前に寝ていた布団だけでなく、来客用の寝泊りセットくらいはいくつかある。
だけど、私たちのような一般家庭の家に来客部屋は当然ながらない。
というか、どこの家もないんじゃないかな。
ど、どうしよう……!
頭を抱えながらしばらく考え込んでいると、後ろのほうから声が聞こえた。
「あれ、映茉ちゃんに晃成くん。なんの話してたのー?」
「あ、お母さん」
短いショートの髪をタオルで拭きながら、パジャマ姿で脱衣所からお母さんが姿を表した。
どうやら、お風呂に入っていたみたい。
「いや、なんか、優太郎の部屋が汚いらしくてさ」
と、若干あきれたような様子で説明する晃成くん。
え、それ、光さんに黙っといてって言われてたんじゃないのかな?
予想外の言葉に私はびっくりして思わず晃成くんを見てしまう。
すると、一瞬私と目が合った晃成くんは、ペロッと舌を出してみせた。
まるで、その様子を楽しんでるいたずらっ子みたいだ。
「えー、そうなの。それじゃあ、今夜は白岩くん泊まれないわねぇ」
そして次の瞬間、お母さんがまたまたとんでもないことを言い出した。
「それなら、映茉ちゃんの部屋に泊まってもらいましょう!」