今はまだ、折れた翼でも


こうも静かだと、チクタクと細かく秒針を刻む音が耳に入ってきて落ち着かない。

早く、帰ってこないかな……。


ベッドに腰をかけながら不覚にもそんなことを考えながらぼんやりしていると、コンコンとドアを叩く音がした。

白岩くんかな。はーいと返事をすると、ガチャリとドアノブが回る。



「やっほー、映茉ちゃん」

「あ、お母さん……」



ドアからのぞいた顔は、白岩くんじゃなかった。

だけど、一人でこのままぼーっとしているのも退屈だったから来てくれてよかった。

お母さんは、私の制服を腕に抱えていた。



「ごめんね、お母さん」



立ち上がり、私は制服を受け取る。

実は、雨に濡れていた制服を乾かしていたのだ。元がびしょびしょだったからまだ少し湿っているけれど、明日には乾いているだろう。



「いいのよ。それより、白岩くんはどうしたの?」

「白岩くんは、今一階にいるの。多分洗面所で歯磨きしてる」



そう答えると、お母さんは困ったように眉をひそめた。

なにか、用事でもあったのかな。
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