今はまだ、折れた翼でも
あの日は具合が悪かったのに奴らとたまたま会って、向こうから振ってきた。
こっちは俺一人で、向こうは五人。
いつもなら、どうにかなる。だけど今は生憎体調不良。
勝てるわけねーじゃん。そんなの。
ものの開始十分で、あっさりと俺はやられた。
「生意気なんだよ、お前。とっとと俺らの前から消えてくれれりゃいいのにさあ!」
だんっと倒れた俺のわき腹を一蹴りした後、満足したように気持ちの悪いにやっとした笑みを浮かべた。
だんだんと、視界が狭まっていく。目を閉じる前、最後に見たのはあいつらの背後。
前日の雨で濡れたアスファルトが、冷たい。
俺はこのまま死んでいくんだろう。急にふと考える。
金髪の、身体中傷だらけの男なんて誰も助けやしないだろうから。
身体が、痛くて動かない。
死ぬ間際、なんて言いたかねえけど、たぶんそうなるんだろうなとどこか冷静な自分がいた。
俺の人生、むちゃくちゃなことばかりだった。いや、9割そうかもしれない。
死ぬなら、最後に言いたかった。忘れ去られたあの人に。
『ごめんな』と。
6月のある木曜日。誰も知らないこの日、太陽の当たらない裏路地で。
俺は、意識を失った。