今はまだ、折れた翼でも



「……え、人?」



目の前には動物じゃなく、怪我をして倒れている人の姿があった。

予想外の展開に私は言葉を失ってしまう。

と、そこで身体に冷たい感覚がした。


あ。


そう思った瞬間、バケツをひっくり返したような大雨が降り注いだ。



「わああっ」



身体に、大量の雨が当たる。もちろん、目の前に人にも。

倒れているのは、男性。高校生くらいだろうか。苦しそうに顔を歪ませている。


ど、どうしよう……!


助けてあげたい。こんな大雨の中放って自分だけが帰るなんてとてもできる状況じゃない。
ここでそんなことしたら、きっと一生後悔してしまう。

動物だったらなんとかできた。抱えて、家に持ち帰れる。

でも相手は男性。私には、とても運ぶなんてできない。背負うことさえできない。
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