今はまだ、折れた翼でも
もう初夏だというのに、身体が冷たい。足に直接雨粒が当たって痛い。
家族に電話したかったけど、スマホの入ったバッグはちょっと前に置いてきてしまった。なんで置いてきちゃったんだろう。
戻っても、今度こそ塞がれる視界の中間違えて踏んでしまうかもしれない。
男性の髪は、金髪だった。雨粒でより光って見える。
私じゃ、どうすることもできない。私の力じゃ人一人運ぶことはできなくて、助けられない。救えない。
私は結局、なにも持ってない。できないんだ。
彼の顔には私の頭が覆いかぶさって、直接雨粒が当たることはない。
「うっ」
嗚咽が雨音にかき消されて、男性の顔へぽたりと雨と一緒になって涙が落ちる。
6月の雨だ。このままいたら風邪を引いてしまう。
もし風邪を引いたのなら、それは私のせい。だから、仕方ないと思える。
じゃあ、彼は?この男性は、助けてもらえるはずだったのに、見つかったのが運悪く私だったせいで、死んでしまうかもしれない。そうなれば、この男性の周りの人はきっと悲しむだろう。
雨脚が、強くなる。諦めてしまいたい。でも、そうすればたくさんの人を不幸にしてしまうかもしれない。
「どうしたらいいの、私……!」
そう呟いた瞬間、頬に何かが触れた。
家族に電話したかったけど、スマホの入ったバッグはちょっと前に置いてきてしまった。なんで置いてきちゃったんだろう。
戻っても、今度こそ塞がれる視界の中間違えて踏んでしまうかもしれない。
男性の髪は、金髪だった。雨粒でより光って見える。
私じゃ、どうすることもできない。私の力じゃ人一人運ぶことはできなくて、助けられない。救えない。
私は結局、なにも持ってない。できないんだ。
彼の顔には私の頭が覆いかぶさって、直接雨粒が当たることはない。
「うっ」
嗚咽が雨音にかき消されて、男性の顔へぽたりと雨と一緒になって涙が落ちる。
6月の雨だ。このままいたら風邪を引いてしまう。
もし風邪を引いたのなら、それは私のせい。だから、仕方ないと思える。
じゃあ、彼は?この男性は、助けてもらえるはずだったのに、見つかったのが運悪く私だったせいで、死んでしまうかもしれない。そうなれば、この男性の周りの人はきっと悲しむだろう。
雨脚が、強くなる。諦めてしまいたい。でも、そうすればたくさんの人を不幸にしてしまうかもしれない。
「どうしたらいいの、私……!」
そう呟いた瞬間、頬に何かが触れた。