今はまだ、折れた翼でも
「ねえ、そこの君」

「えっ?」



突然目の前に人影が落ちた。

反射的に見上げてみるけど、白岩くんじゃないことは一目瞭然だった。暗くてよく見えないけれど、知らない若い男の人。

その隣には、もう一人若い男の人が立っている。



「そんなところでどうしたの〜?俺らと一緒に遊ばない?」

「……え」



心臓がはたりと止まった気がした。ほんとに止まったら私は死んでしまうのだけれど。

背中に冷や汗が流れる。突然のことで、びっくりして声が出ない。



「泣きそうだし、彼氏にでも捨てられたんじゃねえの」

「あ〜そうかも。ねえ、そいつのことなんか忘れて俺らと一緒にあそぼーよ」



話しかけた男の人のほうが、私の手をぎゅっと掴んできた。

今度は恐怖で、身動きがとれない。

掴まれた手の力が強くて、痛い。
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