今はまだ、折れた翼でも
―――――俺の、彼女に。




「は?なんだよお前。この子の彼氏?」

「そうだけど。だから、その手を離せよ」



間違えない。この声は。

私は、俯いたまま顔をあげられなかった。



「ふーん、なんだよ。せっかく手頃な女、見つけたと思ったのにさ」



男性はあっさりとその手を離す。舌打ちを残し、もう一人の男性を連れだって行ってしまった。

とたんに身体の力が抜けて、その場に座り込む。


目の前に、すっとあのときと同じように手が差し出される。

傷は、やっぱりあのときより少し良くなっていた。



「今度は、ちゃんと掴め」



優しくてほんのり甘い声が耳に響く。

ついさっき、もうなににも、誰にも甘えたりしないんだって決心したばかりなのに。

その手を掴んでしまうのは、なんでなんだろう。
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