今はまだ、折れた翼でも
そのままひっぱって立ち上がらせてくれる。

手の温かさが、心地いい。



「ごめん、すぐ助けにいけなくて」


「ううん。こうなったのは、私のせいだから」



あのときよそ見せずちゃんとしていたら、こんなことにならずに済んだのだ。

そうしたら白岩くんに迷惑かけずに済んだし、怖い思いをしなくて済んだ。

私は俯いたまま目を閉じる。



「……足、痛いだろ。とりあえず靴履こう」



手が離されて、もう一度腰掛けて靴下と靴を履く。

履き終わったとき、ぽたっと、何かが零れ落ちた。白いロングスカートに染みる。だけど、暗くて行方までは分からない。

すると、急に顔に手が触れてそのまま視線が上に向く。



「しらいわ、くん」


「望って呼べ」



目の前にある哀しそうな表情を見てしまったら、逆らうことなんてできない。

躊躇うことなく、その名前を口にした。



「望、くん」


「どうした、映茉」



今度は、優しい顔だった。



「ごめんね。……ありがとう」



しらいわくん……望くんは、私たち家族に感謝してるって言っていたけれど。


それなら私は、望くんに感謝してるんだよ。いや、感謝してるだなんていう言葉じゃなくて。

もっと、ちゃんと適切な言葉があるはずだ。


この気持ちを表せられる、なにかが。




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