今はまだ、折れた翼でも
2 ひねられない気持ち
「ちょっと、映茉ちゃん!ずぶ濡れじゃない!」



やっとのことで家につくと、お母さんに出迎えられた。いつも元気に上がっている眉が、下がり気味になっている。

私は申し訳なくなって、とっさに謝った。



「傘、忘れちゃったの?あと、その人は?」



お母さんが指さした先には、私の肩に背負われている彼の姿。



「えっと、帰ってる途中で倒れてるのを見つけて……。それで、そのままにしておくわけにもいかずに……」



心配をかけておきながら見知らぬ人を家まで連れてきてしまった。お母さんに、少し罪悪感が……。いや、そんなことは嘘でも言っちゃだめだ。この人に失礼になる。

少しうつむきながら事情を説明すると、後ろで玄関の扉が閉まる音がした。



「とりあえず、家に上がって。お風呂に入る。話はそれから」



お母さんは、人差し指を立てながらウインクを一つ。

私はお礼をいって、まだ、意識のない彼と家に上がった。
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