今はまだ、折れた翼でも

なんであのとき、怪我をしていたのかとか。



その理由を、望くんは聞かせてくれない。直接聞いたわけじゃないからなんとも言えないけれど、理由を教えるのを遠ざけているように思う。

ただ私が自意識過剰になって、そう思っているだけなのかもしれないけど。


だから、話してくれるまで待ってみようと思う。……話してくれる日がこないまま、お別れになる可能性もあるけれど。


そこまで考えたとき、部屋のドアを叩く音がした。返事をすると、開けて入ってくる。


……まさかの、本人登場となってしまった。



「どうしたの?望くん」


「いや、これ、渡してくれって言われたから。持ってきた」



望くんはドアを閉めてから、テーブルの前に座った。
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