今はまだ、折れた翼でも
……あ、どうしよう。

その次の日のお昼。私は衝撃的なことに気づいてしまった。


体操服、忘れてしまった……。


普通なら誰かに貸してもらうとかすればいいんだろうけど、私にはそういう親しい関係の人はいない。

といっても、体育の先生はすごく厳しいので軽々しく“忘れ物をしました”なんて言えるはずもなくて。


体育の授業は六時間目。今は昼休みだし頑張れば家から取ってこれるかな。

……でも、私、50m11秒の鈍足だしなあ。


もんもんと考えていると、とつぜんばーんと勢いよく教室のドアが開いた。

開けた生徒は、走ってきたのか息を切らしている。



「どうしたんだー花田。そんなにあわてて」



誰かがそう声をかけると、その生徒———クラスメイトである花田さんは興奮したように口を開いた。



「校門のとこに、超絶イケメンが来てんのっ!それで……あ、鳥越さんっ!」



花田さんはこちらをまっすぐ見つめながら、歩いてくる。
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