今はまだ、折れた翼でも
校舎を出ると、たしかに校門の周りに人だかりができている。

だんだん近づいてきて、わかる。女子生徒ばかりだ。

だけど、“私に用がある”という張本人の姿は見えない。


やっとのことで現場までたどり着き、手は離され、肩で息をしながら歩く。



「あっ」



人だかりの中から、低めの男性の声が聞こえた。

私に、気が付いたのかな。


そして、たくさんの女子生徒の後ろから現れたのは—————。



「お前、忘れてったろ」



—————なんと、晃成くんだった。




「こ、晃成くん、どうして」

「どうしてって言われてもな。ほら」



晃成くんは私の前に一歩出ると、手に持っていた布袋を渡してきた。
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