今はまだ、折れた翼でも



とりあえず私の部屋に布団をしき、その上に濡れないようタオルを敷いて、彼を寝かせた。

私はその間に湧いたお風呂に入る。

熱いシャワーが身体を芯から温めていく。湯船にはいつもより長めに浸かった。


……どうしよう。お母さん、内心ではよく思ってないかもしれない。

私のお母さんはいつもパワフルで、人と関わるの好きだ。だけど今日はとても心配をかけてしまったし。……あとでちゃんと、もう一度謝らないと。


そんなことを考えながらお風呂から上がり、少し早いけどパジャマを着て、洗面台の前でセミロングくらいの長さの髪を乾かし、ゆるく下の方で二つに結ぶ。


脱衣所から出ると、リビングにお母さんの姿はなかった。時刻は午後5時20分。買い物に行ったのかな。

この時間にリビングに誰もいないのは珍しいことじゃない。私は二階に通じる階段を上り、自分の部屋に向かった。


部屋に入って様子を見るけど、まだ目を覚ましていない様子。静かな空間に、ただその姿があった。

私はベッドに腰掛ける。耳をすますと、かすかな寝息が聞こえてきた。

寝てる、のかな。とりあえず意識は戻ったみたいだから安心だ。
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