今はまだ、折れた翼でも
近所のスーパーでメモの通りの食材を購入する。

家族以外の人と普通に買い物をするなんて、私にとってはとても新鮮な時間だった。


大きめの袋二個分を抱えて、私たちはスーパーを出た。

というか、結構時間かかっちゃったな。

スーパーを出たときちょうど5時を告げる音楽がなっていて、家を出たのが4時過ぎだとすると30分以上いたみたい。



「ごめんね。一つ、持ってもらっちゃって」



店内で袋詰めした後、望くんが一つ持たせてしまうことになったのだ。

しかも、自ら大きくて重そうな方を選んでいたし。



「別に、そのためについてきたわけだし。気にすんな」



望くんのそんなさりげなく優しいところが、好きだなって思う。

……え、好き?


え、好きっ!?



「え、あの、もう全然、そういうのじゃっ!決して、やましい気持ちなどありませんっ!」

「は?どうしたんだ、映茉」


「えっ!?」



パニックになってそのことに自分自身もびっくりしていて、望くんの一言で我に返る。と同時に足が止まる。

……あれ、私、どうしたんだっけ……。
< 84 / 198 >

この作品をシェア

pagetop