今はまだ、折れた翼でも
「周りの木は桜だから春は花びらで原っぱがピンク色になるんだ。夏、ちょうど、あと一か月くらいすると、この辺はひまわりの花でいっぱいになるんだよ。蝉が鳴いててね、夏休みには、いつも虫取りするんだけど—————。」



ふと左隣を見ると、優しく微笑む望くんと目が合ってしまった。

でも望くんはびっくりする様子もなく、まっすぐ見つめてくる。


私はそのまま捕らえられたような錯覚に陥って、目が離せない。



「……あ、わ、私ばかりしゃべっててごめんね。というか、虫取りが好きだなんて変だよね。ごめんね、気持ち悪くて」



ついつい勢いに任せてそんなことまで言ってしまう。

話すつもりはなかったのに。



「別に、いいんじゃねえの」

「え?」

「虫取り?っつーか、虫が好きでも。気持ち悪いだなんて、思わねえよ」



眉をひそめながら首をかしげてそう言う望くん。
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