今はまだ、折れた翼でも
風で、明るい金色の髪がさらさらと揺れる。



「……私、動物とか植物だけじゃなくて虫も好きなこと、怖くて周りには言えないんだ。幼稚園に通ってた頃、“虫が好きなんて気持ち悪い”って言われたことがあって。それ以来、秘密にしてて。……でも、望くんがそう言ってくれるなら、私、虫が好きな自分に胸を張れそうな気がするよ」



話の流れでそんなことまで言ってしまったけど、私は自分を否定してくれた望くんの暖かさを感じた。

望くんの優しさ、私が貰っちゃってもいいのかなって思うけど。



「俺も、見てみたい」

「……えっ?」


「その、ひまわり畑とか」



望くんが、今度は視線をそらしてそう言う。



「……うん、それじゃあ、見に来ようよ。一緒に。私、誰かと見るなんて初めてだなあ」


「……そうか」



望くんは立ち上がりながら、短く返事をする。

私もベンチから腰を上げ、隣に置いておいたスーパーの袋を手に取った。



「じゃあ、帰ろっか」

「分かった」



“分かった”というその言葉を発する声が、柔らかい。安心する。

まだ、隣にいられるんだって、思うから。


< 88 / 198 >

この作品をシェア

pagetop