今はまだ、折れた翼でも
ぼーっとしながら、なんとなくその寝顔を見てしまう。あのときは必死で気づかなかったけど、とてもきれいな顔立ちをしている。すっと通った鼻筋に、形のいい薄めの唇。

まぶたにかかる湿った金色の前髪が、まっすぐ伸びている。


というか、私は何を見てるの、失礼だよっ。

正気に戻すように頬をパチンと叩く。



「うう、いた〜い」



自分で叩いておきながら痛くて手で両頬を押さえる。

と、その瞬間、彼が寝返りを打った。同時に、少し声を漏らす。



「んん……」



ぎゅっと目をつむった後、ゆっくりと開いた。

お、起きた……?



「どこ、だ……?」



突然目に入った電気の光が眩しいのか、その瞳を細める。

様子からするに、今まで一度も目を覚ましていないみたいだった。

……じゃあ、あのときの言葉や行動は、全部無意識なのかな。私の幻聴、幻覚の可能性もあるけれど。
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