今はまだ、折れた翼でも
12 望くんの決意
次の日。つまり月曜日。

そしてその、放課後。



「進路相談室……ここ、かな?」



私は山川先生に呼び出しをされて、今“進路相談室”と思われる教室の前にいる。

放課後に予定はないし、全然、大丈夫なんだけど。

呼び出しの理由は、まあなんとなく察しはついている。



帰りに先生と会った後、あいさつだけ交わしてさらりと別れてしまった。

……なんで、先生が望くんのことを知っているのかな。

そう思ったけど、なんだか望くんには聞きづらくて。無神経に聞いて、望くんに傷ついてほしくないから。


でも、なんで知っているのかがどうしても気になって、夜にこっそり、北田高校に入学したときに貰った資料なんかをひっぱりだしてみた。

もしかしたら、望くんとは同じ学校なんじゃないかなって思って。


そして見つけたのが、入学式の日に配布された生徒名簿。

ざっと目を通してみれば、考えていた通り生徒名簿に“白岩望”と書かれていた。

だから初めて会って自己紹介されたとき、名前に聞き覚えがあったんだ。


……だけど、おかしい。

違うクラスなら、うろ覚えでも“それなら”ってなんとか納得はできる。

でも、望くんの名前が書いてあったのは私と同じ一年二組の欄。

確認するために自分の名前も探してみるけど、ちゃんと記載されていた。


同じクラスだったってこと……?

でも、私のクラスには空いてる席はなかったはず。

山川先生だって、長期欠席している生徒がいるなんて一言も言っていなかった。


それはまるで、いない存在みたいに—————。


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