今はまだ、折れた翼でも
「鳥越」



隣から山川先生の声が聞こえ振り向くと、その後ろには望くんの姿もあった。

望くんは、普通のTシャツとジーンズを着ている。



「のぞむく———」



そう呼ぼうとすると、望くんは目をそらすでもなくただこちらを見ていた。

昨日原っぱにいたときのとはまた違う視線。



「入れ、鳥越。遅くなってすまない」

「……はい」



山川先生が扉を開け、私はそのまま部屋に入った。

中には、背の高い丸テーブルに折り畳み式の椅子が三脚。

私と望くんは隣同士で座らされ、目の前に山川先生が座った。


狭いこの密室が、苦しい。

だけど、もっと苦しいのは、望くんのほうだ。きっと。
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