浮気されたら、エリート整形外科医に溺愛されました【完】

元カレの浮気

窓の隙間から暖かい風がふわりと滑り込み、私の髪を優しく揺らす。
この病院のシンボルである正面玄関の桜の木も、もう間もなく満開を迎えようとしていた。

医療秘書室のノートパソコンに向かって今週のスケジュールの確認をしていると、スーツのポケットの中でスマホが震える。
画面に映し出されたメッセージを確認して、朝からげんなり。


水姫(みずき)、お願いだから、もう一度話を聞いて欲しい』


ため息交じりに「しつこいな……」とつぶやくと、スマホをポケットにしまった。
メッセージの送信主は、約1年ほど付き合っていた彼……淳史から。



遡ること1週間前の土曜日。
予定より2時間ほど早く休日出勤を終えた私は、淳史のアパートへ向かっていた。
朝、出勤前に『仕事が終わったらアパートに行くから』と送信していたから、問題ないと思っていたのだけれど。


その考えが甘かった。


玄関のドアを開けるなり私の目に飛び込んできたのは、見知らぬ女性のパンプス。
淡いピンク色のかわいらしいパンプスは、今の季節にぴったりだ。

……いや、今はそんなことどうでもいい。

速足で部屋の中に入り寝室へ向かうと、私の彼氏である淳史が見知らぬ女性の上にまたがり肌を重ね合わせている。
全身の力が抜けたと同時に肩からバッグが滑り落ち、床にドサッと鈍い音が響いた。
< 1 / 142 >

この作品をシェア

pagetop