浮気されたら、エリート整形外科医に溺愛されました【完】
「中で待たれます?」

「えっ!? いや、大丈夫! 食堂で時間潰してるから」


慌てふためきながら、身振り手振りで応える私。 ダサいもいいところ。

だけど、いくら妻とはいえ〝夫の浮気の偵察に来ました〟なんて、口が裂けても言えないって……。


「ごめんね? 仕事中なのに」

「いえ! とんでもないです。 久しぶりにお会い出来て嬉しかったです」

「ありがとう。 またね!」


水瀬さんに手を振りながらその場を離れると、その足で食堂へ向かう。
……とりあえず、食堂でコーヒーでも飲んで時間を潰そう。

予定は未定だけれど、だいたい手術が終わる時間は予想がつく。 それくらいに、また秘書室に行けばいい。

食堂内に入り券売機で食券を購入すると、カウンターに出す。
「あらー! 桜川さん、久しぶりね!!」と、会う人会う人に声をかけられながら、なんとか席に座った。

バッグからスマホを取り出して画面を確認すると、麗華からのメッセージを受信してることに気が付いた。


『くれぐれも、ヘマしないように』


……ヘマって。 もうちょっと、違う言い方はなかったのかしら。

確かにね、私は鈍臭いし、思ってることすぐに顔に出るタイプだし、お世辞にも〝偵察に向いている〟と言えない。
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