浮気されたら、エリート整形外科医に溺愛されました【完】
「あ、いけない。 会場の予約しなきゃ」


と、職場用のスマホを手に取ったときだった。

「お疲れ、藤田」と言う声とともに、ドアの向こう側から桜川先生の姿が見えた。
驚き、慌てて「お疲れ様です!」と返事をした瞬間手からスマホが滑り落ち、ゴトッと床に落としてしまった。


「す、すみません……!!」

「おいおい、大丈夫か?」


そう言いながらスマホを拾って私に手渡してくれる桜川先生。
「ありがとうございます」と受け取り、操作に異常がないかすぐさま確認した。

……大丈夫。 正常に動いてるから問題はなさそう。


「慌ててるなんて、藤田にしては珍しいな」

「すいません……急に桜川先生がお戻りになられたので。 今日は外来終わるが早かったのですね」

「そうだ。 12時半オペ出しだからな」


桜川先生がお戻りになられたのは12時10分前。
私たちは昼食を取れる時間に済ませてしまうので、ほかの職員と昼食がかぶることは少ない。

桜川先生は今から軽い食事を取って、長丁場である手術に挑むのであろう。
が、今日は昼食を取る様子ではなさそう。


「桜川先生? 昼食、空いた時間にお願いしますね。 午後は予定が詰まっていますので」

「あぁ……そうする予定だよ。 ところで藤田、朝俺が言ったこと覚えてる?」

「えっ? 朝……言ったこと、ですか?」
< 12 / 142 >

この作品をシェア

pagetop