浮気されたら、エリート整形外科医に溺愛されました【完】
しばらくすると、飲み物とともに前菜が運ばれてくる。

今までに見たこともないような、彩り鮮やかな食材をふんだんに使用している前菜。

麗華ときていたら、きっと今頃カメラを構えている。
……さすがに、今日はそんなことできないけれど。


「藤田くん、遠慮はいらないよ」


緊張気味の私に気を遣ってくれた桜川医院長がそう言ってくれ、「はい、いただきます」と言ってから、少しだけカクテルを口に含んだ。

爽やかなピーチの風味が、口いっぱいに広がる。


「さぁて。 望が私に話があるとのことだが……どうしたのかね?」


ワイングラスを揺らしながらワインの香りを堪能している桜川医院長。
一口だけワインを口に含み、「おぉ、このワインは美味だね」と満足気に言った。

前菜に手を付けようとしていた桜川先生は右手に持ていたフォークを置いて背筋を正すと、真っ直ぐ桜川医院長を見つめている。

釣られて、私も背筋をピンと伸ばした。


「望が藤田くんを……いや、女性を連れて来るなんてことは初めてだろう」


……そうなの?
桜川先生がこんな風に女性を連れて歩くことが初めてだなんて。

ちょっと意外。


「はい。 今日は、お父様にお伝えしておきたいことがございまして」


淡々と言っているようだけれど、桜川先生は私にはどことなく緊張しているように見えた。
そして次に出てきた言葉は、私が想像もしていなかった言葉。
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