浮気されたら、エリート整形外科医に溺愛されました【完】
「散々だったね」と、あたたかいコーヒーが入ったマグカップを渡してくれ、話を聞いてくれた麗華の優しさには感謝しかない。
翌日は日曜日で淳史が仕事でアパートにいない時間帯を狙って、必要最低限の荷物を麗華の住むアパートに運び出した。

テーブルに合鍵を置いた瞬間なぜか寂しさが込み上げてきたけれど、先日の衝撃現場を思い出すと一瞬で寂しさなんて吹き飛んでしまった。


もう、しばらく恋愛はしない。


そう心に気めて、今まで以上に仕事に精を出している。

もともと医療に興味があり、高校卒業後は医療秘書の資格が取得できる専門学校に2年間通った。
卒業後は地域医療型の病院に就職し、脳外科医長の秘書として働いていたけれど、段々と〝もっと大きな病院で働いてみたい〟という気持ちが大きくなり、総合病院である桜川病院に転職したのだ。

地域医療とは異なり日々忙しいけれど、それなりにやりがいはあるし、なにより充実している。
色々な症例で手術治療を行っている整形外科の忙しさは、失恋後の私にとってちょうどよかったのだ。


「おはよう、藤田」


メッセージを受信したことにより先日の衝撃的な浮気現場を思い出していると、秘書室に桜川先生が入って来られた。
就職後、ずっと担当している桜川 望先生は当院整形外科医であり、次期医院長でもある。
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