浮気されたら、エリート整形外科医に溺愛されました【完】
彼女は彼女なりに大変な思いをしてきたようだけれど、話の所々で幸せな表情がふと現れ、子どもに対する愛情が窺えた。
出来ることなら私もこんな風に幸せな家庭を築きたかったけど、仕方ないよね。


「それでさ、どうして実家に戻って来たの? 夢だった病院での勤務は?」


キッチンで食後のコーヒーを淹れている最中、亜美が背後から質問を投げかける。

……そうだ。 多分、それが本日の話題。

冷蔵庫から買い置きしていたプリンを取り出すと、淹れたばかりのコーヒーとともにテーブルへと運んだ。


「驚かないでね? 私、妊娠してるの」

「え? えぇ!?」


「驚かないで」と言っておいたのにも関わらず、コーヒーがひっくり返るのではないかと思うくらいの勢いで驚く亜美。

……そりゃそうだよね。
私が逆の立場だったら、間違いなく驚くもの。

夢であった仕事に就きたいからと街を出て、ふらりと帰って来たかと思いきや妊娠してます。なんて、私の人生波乱万丈すぎにも程がある。


「待って! 妊娠!? 赤ちゃんいるの? おめでとうじゃん!!」

「ありがとう。 今3ヶ月なんだ。 でもね……」


ここまで言って、言葉に詰まってしまった。

〝父親、いなくて〟と言うことがどうしても言い辛く、ためらってしまう自分がいる。

自分で決めたことなのに、まだこんなにもためらいがあるのかと、情けなく思ってしまう。
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