浮気されたら、エリート整形外科医に溺愛されました【完】
「なんだ、知り合いなのか?」

「え……いや、まぁ…先日、浮気されて別れたはずの元カレでして……」


きっと、私がメッセージを無視していたから、職場までやって来たのだと思う。
もう、誤魔化すのもめんどうだった。


「別れたのに、なにか用でもあるのか?」

「多分、復縁……を申し込みに来たんだと。ずっとメッセージ来てますし」


こんなこと、桜川先生に話たってどうしようもないのに。
けど、あれやこれやと言い訳しようにも、きっと意味はない。

だって……淳史来てるし。


「私、ちょっと病棟行ってきます。迷惑だって、ちゃんと言わなきゃ……」


私がいい加減な別れ方をしてしまったからいけないんだよね。
ちゃんと「もうやり直す気はない」って言えば、大丈夫……なはず。

桜川先生のスケジュール確認もおろそかに、私は秘書室を出ようとドアノブに手を掛けた。


「俺も行っていい?」


背後から聞こえたのは、桜川先生の信じられない発言。

……今、なんて?
桜川先生も、一緒に? どこへ……?


「俺も一緒にナースステーション行く」

「え!? ちょっ、どうして桜川先生が一緒に……」

「いいから行くぞ」


想定外の展開についていけない私をよそに、桜川先生は病棟へ向かおうとする。

もう間もなく外来が始まろうとしているというのに、いったいなにを考えているのだろうか。
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