浮気されたら、エリート整形外科医に溺愛されました【完】
淳史に浮気されたときは、割と早くに連絡先を消去出来た。

けれど……桜川先生の連絡先は、半年経った今でも消去できなかった。
なぜ消さなかったのかはわからないけれど、残しておいて正解だったのかな。

「じゃあ、後で」と言うと、桜川先生はその場を離れる。

だいぶ落ち着きを取り戻した私も、その後は祖母のレントゲン撮影と診察に付き添い、次回の予約を入れてもらった。

今回も感染などの異常はなくて、次回から1年フォローになる。 今まで半年に1度だったから、少しは楽になるかな?

そんな風に考えながら会計を済ませると、約束通り桜川先生にメッセージを送った。
『悪い。 あと10分くらい待ってて欲しい』と返信があり、祖母と待合室に座りながら桜川先生の到着を待つ。


「水姫ちゃん? 帰りは、誰か送ってくれるのかい?」

「う……うん。前の職場の人なんだけど……詳しくは、また後日話していい?」


今の状況を、他人に簡潔に話すのは正直難しい。

どこから話せばいいかわからないし、話したとしても、きっと祖母も話の整理がつかないに決まってる。


「そうかい、そうかい。 水姫ちゃんが話したいときに話しておくれ」


うんうん、と相槌をつきながら、祖母は優しくそう言ってくれた。

きっと、私が今上手く話せないのを理解してのこと。
< 56 / 142 >

この作品をシェア

pagetop