浮気されたら、エリート整形外科医に溺愛されました【完】
後部座席に祖母と並んで座り、シートベルトを締める。
2人並んで座っていてもまだゆったり余裕があるシートは、私の乗っている軽自動車とは比べものにならないくらいだ。

運転席へ周りエンジンをかけると、桜川先生はゆっくりと車を発進させた。

「揺れが少ないねぇ、この車は」と、窓の外を眺めている祖母に、〝いつもは揺れまくりでごめんなさいねぇ〟と心の中で呟く。

外車初体験でご満悦の祖母を乗せた車が家に到着し、空いているスペースに車を駐車させた。
桜川先生が後部座席側まで回ってきてくれ、祖母の手を取る。


「ありがとうねぇ。 生きているうちに素敵な車に乗れてよかったわ」

「そうですか、それはよかったです。 喜んでいただけて、光栄です」


にこにことした表情で、祖母に話掛けている桜川先生。

高級マイカーが褒められて、どうやらこちらもご満悦なようで。


「ほら、なに言ってるのよおばあちゃん! 長生きして私のウェディングドレス姿見るって言ってたでしょう」

「あはは、そうだったわねぇ」


そんなことを言いながら、家に向かってゆっくり歩く。
「じゃあ、また帰りに少し寄るからね」と言い残し、祖母の家をあとにした。

祖母を見送り再び車に戻ると、助手席のドアを開けて待っていてくれた桜川先生。

私の手を取ると、優しくエスコートしてくれた。
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