浮気されたら、エリート整形外科医に溺愛されました【完】
そう言って、桜川先生は私の身体を抱き寄せる。
あたたかい桜川先生のぬくもりに、私の頬を一筋の涙が流れた。

触れあった場所からトクン、トクン……と桜川先生の胸の鼓動が伝わり、緊張していたのは私だけでないことも知る。


「水姫、俺は、君を愛している」


私の頬に手を添えると、優しくキスをした。

あぁ……そうだ。 私、ずっとこの人のぬくもりを求めていたんだ。
自分の気持ちに蓋をして、溢れてしまわないようにしていたんだ。

桜川先生は、そんな私の気持ちを簡単に揺るがしてしまう。

唇が離れると、桜川先生と目が合った。
〝水姫と結婚したい〟と言ってくれた日と同じ、真剣な眼差し。


「桜川先生……私、妊娠しています。 お腹に、赤ちゃんがいて……でも…」

「わかってる。 俺との子じゃないんだろう?」


時に、言葉は本当に残酷だ。

本当のことなのに、胸がキリキリと痛みだした。
〝俺との子じゃない〟と、桜川先生はどんな気持ちで言ったのだろうか。


「ごめん…なさい……」


涙が次々に溢れ出す。

やっぱり、会ってはいけなかったのかもしれない。
愛おしい人が目の前にいるのに、私が傷つけてしまっている。

桜川先生もきっと、あんな言葉口にしたくなかったはずなのに。
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