【電子書籍化】聖女の力を失った私は用無しですか?~呪われた公爵様に嫁ぎましたが、彼は私を溺愛しているそうです~
 急がなくていいよ、と一言コルネリアに声をかけるレオンハルトは、食事の準備をするテレーゼたちメイドが運んでくる前菜にちらりと目をやる。
 前菜を目にした途端、少し苦々しい表情を浮かべたレオンハルトの様子を見逃さず、テレーゼは言う。

「レオンハルト様、今日はにんじんは残してはなりませんからねっ!」
「わざわざ大きな声で言わなくてもいいからっ!」

 そんな会話はもちろんコルネリアの耳にも届き、彼女はレオンハルトに尋ねる。

「にんじん……お嫌いですか?」
「んぐっ……ああ、少し」
「少しじゃないですよね?!」
「テレーゼっ! いいから次の準備してっ!!」

 去ろうとした足を止めながらでもツッコむテレーゼに、レオンハルトは照れた表情を浮かべながら反論する。
 今まであまり意識していなかったが、確かににんじんがそのまま皿に盛り付けられることがなかった気がして、それが彼の好き嫌いを考慮してのことだったのかと気づく。
 だが、今になってなぜ?といったように感じたのだが、その答えはすぐにわかった。

「ハッピーバースデイ、レオンハルト様っ!」
「……え?」
「ああ、ありがとう」

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