【電子書籍化】聖女の力を失った私は用無しですか?~呪われた公爵様に嫁ぎましたが、彼は私を溺愛しているそうです~

第3話 幼き頃の寵愛と悪夢

 レオンハルトは夢の中にいた。
 彼の脳は幼い頃の記憶を呼び起こし、彼に両親から受けた愛、そして「あの日」の悪夢を見せている。

「もう、あなたったら! レオンハルトを甘やかしすぎです!!」
「だって、可愛いじゃないか。こんなにつぶらな瞳で俺を見つめるんだぞ?!」
「だからっておもちゃをなんでも買い与えてはなりません!」

 レオンハルトの両親は政略結婚ではあったものの学院時代の同級生であり、恋愛結婚でもあった。
 故に使用人たちも微笑ましく、時には恥ずかしくなるほどに仲が良く、待望の第一子であるレオンハルトへの寵愛は凄まじい。
 やっと立てるようになったところであるにも関わらず、すでに数十個ものおもちゃを買って遠征から戻ってきたレオンハルトの父であるダーフィットは妻のアンネに叱られていた。
 家業のメインが繊維業であったアンネの実家は、天候不順によって裕福とは言えない時期を過ごしたことがあった。
 爵位は伯爵という位ではあったものの、身に染みて金の大切さを理解していた彼女は、ヴァイス家に嫁いだ後も無駄遣いをしなかった。

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