再びの異世界、可愛かった皇子様が俺様竜帝陛下になってめちゃくちゃ溺愛してきます。

(……と言って、この国でリューと結婚して竜帝妃になるのはなぁ)

 未だに実感がわかない。というか私に一国のお妃様なんて大役が務まるとはどうしても思えない。
 文字も読めない。この国、いや、この世界のこともまだわからないことだらけだ。
 小さく溜息を吐きながらもう一度この国の景色を眺める。
 リューはこの国の人たち皆が私を歓迎していると言っていたけれど。

(本当にそうなのかな……)

 確かに聖女の力で魔王を封印して世界は救ったけれど、異世界から来たなんて得体の知れない小娘を本当に皆歓迎してくれているのだろうか。

「自信ないなぁ」

 そうぼそっと零したときだった。

「お悩みかな?」
「!?」

 唐突に聞こえた声にびっくりして立ち上がる。
 でもその姿はどこにもない。
 幻聴かと腕の中のメリーを見下ろすと怯えた目とぶつかって。

「聞こえたよね?」
「き、聞こえたのです」
「だよね!」

 少し高めの、でも確かに男の人の声だった。

 ――でもそのとき、一瞬何かを思い出しかける。
 確か前にもこんなことが……。

「久しぶりだね、コハル」
「だ、誰!?」

 またはっきりと聞こえた声に身構える。
 と、視界の端でキラリと何かが光った気がして急いでそちらを見るがやっぱり何もない。

「忘れてしまったのかい?」
「え?」

 次の瞬間、いきなり目の前に長身の男性が現れた。

「ぎゃっ!?」

 驚いて後退りした私はすぐ背後にあった椅子に思いっきり足を引っ掻けてしまった。

(――ヤ、バっ!)
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