再びの異世界、可愛かった皇子様が俺様竜帝陛下になってめちゃくちゃ溺愛してきます。
頬に手を添えられてその綺麗な瞳が近づいてくる。私はゆっくりと目を閉じて……。
「ゴホンっ」
「!?」
いきなり聞こえた咳払いにびっくりしてそちらを見る。
「陛下、ここでは人目につきますので」
セレストさんが眉間に皴をいっぱいに寄せて立っていて、かぁっと顔が熱くなった。
(み、見られてた……!)
そうだ。ここはいつ誰が通るかわからない廊下でした!
リューも慌てたように私から手を離した。その顔はやっぱり少し赤くなっていて。
「そ、そうだな」
「そろそろ皆様ご到着される時刻です。コハル様も御支度を」
「は、はいっ!」
思わず出た声がひっくり返ってしまい、更に顔の熱が上がった。
そうして、私たちはそれぞれ部屋に戻り午後の準備に入ったのだった。
(リューも嫉妬なんてするんだ)
ローサたちに支度を手伝ってもらいながら、先ほどのあの不貞腐れた顔を思い出してついまた口元が緩みそうになってしまった。
――でもまさか、その「嫉妬」がこの後あんな笑えない事態を招くなんて、このときは思いもしていなかった……。