再びの異世界、可愛かった皇子様が俺様竜帝陛下になってめちゃくちゃ溺愛してきます。

(一体、どんな人が……?)

 そして、もう一度ノックがされ扉が開いた。
 私も立ち上がり、ごくりと喉を鳴らす。
 でも、恭しく頭を下げたセレストさんの前を通り、この謁見の間に入ってきた人物を見て。

 ――!?

 パカンと口が開いてしまった。

(え、エル……!?)

 その銀髪、翡翠の瞳、中世的で美しい立ち振る舞いは間違いなく、つい先ほど再会したばかりの彼だった。

(な、なんでエルが……)

「久しいな、妖精王」

 リューがそう言って彼の方へと歩み寄っていく。

(……は? 今、なんて?)

 リューの堂々とした背中を目で追いながら、脳内で彼の言葉を反芻する。

 ――妖精、王?

 私の聞き間違えでなければそう呼ばれたエルは、朗らかな笑みを浮かべてリューに右手を差し出した。

「いやあ、突然来てしまって悪かったねぇ。竜帝くん」

 そうしてふたりはしっかりと握手を交わした。

(――ちょ、ちょっと待って。え? エルが妖精王? 妖精王って、『妖精の国』の王様ってこと……!?)

 記憶を辿れば確かにエルと出逢ったのは『妖精の国』だった。
 でも、妖精であるメリーは彼のことを全然知らないようだったし、一国の王様があんなふうにふらふらと私の旅について来たりするだろうか。
 と、私がひとり大混乱しているときだ。

「コハル、さっきぶり~」
「へっ!?」

 エルが良い笑顔でひらひらと手を振っていた。
< 112 / 435 >

この作品をシェア

pagetop