再びの異世界、可愛かった皇子様が俺様竜帝陛下になってめちゃくちゃ溺愛してきます。

 ……言いたいことは色々あるけれど、これでこれまで彼が突然現れたり消えたりしていた謎が解けた。

(妖精王かぁ……)

 メリーのように元々不思議な力を持つ『妖精』。彼はその王様。

(てっきり妖精王って、メリーをそのままでっかくした感じなのかと思ってた)

 と、そういえば。

「メリー、ついて来なかったな」

 少し視線を上げれば、高く聳える山の中腹につい先ほどまで自分がいた城が見えた。
 メリーなら追ってきてくれると思ったのだけど。

「あの子からは僕たちが突然消えたように見えただろうからね」
「え!」

 だとしたら、メリーは今頃パニックになっているのではないだろうか。

(それがもし、リューの耳に入ったら……)

 先ほどのリューを思い出して、胸がざわついた。

「……やっぱり、私お城に」
「ちょっと散歩するだけだよ。すぐに戻れば問題ないって」
「でも、」

 するとエルは翡翠の目をすっと細めた。

「竜帝くんが怖いかい?」
「こ、怖いってわけじゃ」

 思わず大きな声を出すと、今横を通り過ぎた女性が「え?」という顔でこちらを振り返った。

「声は聞こえちゃうよ」

 シーッとエルが人差し指を口元に当てて、私は慌てて口を塞ぐ。
 するとその女性は首を傾げてそのまま行ってしまった。

(そういうのは先に言って欲しい……)

 そんな私を見てエルは笑った。

「ほら行こう、コハル」

 優しく手を引かれて、私は息を吐いて歩き出した。

 ……実際、気分転換はしたかった。
 あのまま部屋にいても、ぐちゃぐちゃとした暗い気持ちをずっと引きずっていただけだったろうから。

 そうして私はエルと共に『竜の都』の散策を始めたのだった。

< 122 / 412 >

この作品をシェア

pagetop