再びの異世界、可愛かった皇子様が俺様竜帝陛下になってめちゃくちゃ溺愛してきます。
そして漸く、入口と同じような古い扉へと辿り着いた。
この扉の向こうにきっと彼はいる。
呼吸を整えて、よし、と意気込んでその扉をノックする。
「私です。リュー、いますか?」
……返事はない。
「リュー?」
もう一度、コンコンと扉を叩いて呼びかけてみるがやっぱり返事はなかった。
中からは物音ひとつ聞こえなくて、もしかしてここにはいないのではないかと不安になり始める。
と、よく見ればその扉には鍵はついていないようで、私はそのノブに手を掛けてみた。
するとガチャリと難なく開くではないか。
「入っちゃいますよ?」
一応小さく断りを入れてその扉を押し開いていく。
ギィと音を立てて開かれた扉の向こうは階段と同じく暗かった。
でも部屋の中がどうにか見渡せるのは大きな出窓から差す月明かりのせいだとわかって。
「!」
その出窓に横向きに腰掛けている人影があった。
「リュー?」
「……」
そのシルエットは彼に間違いないのに、返事はない。