再びの異世界、可愛かった皇子様が俺様竜帝陛下になってめちゃくちゃ溺愛してきます。

「なんださっきのクソみたいなプレゼンは!?」

 ドンっと机を叩く音と共にそんな怒鳴り声がオフィスに響いた。

「申し訳ありません!」

 私はもう何度目か、深く頭を下げる。

「この案件が通らなかったら全部お前の責任だからな、佐久良!」
「そ、そんな……課長も昨日これでOKだと」
「はぁ!? 俺のせいだとでも言いたいのか!」
「い、いえ……」
「気分が悪い!!」

 そう怒鳴って課長は荒い足取りで廊下へと出て行ってしまった。きっと喫煙所にでも行ったのだろう。
 はぁ、と大きな溜息を吐いているとどこからともなくクスクスと笑う声が聞こえてきた。



「先輩は要領が悪いんですよ~」

 化粧室で一緒になった後輩がピンクのリップグロスを塗りながら鏡越しに言う。

「ああいうときは目をうるうるさせて、ごめんなさ~いって可愛く謝れば大抵許してくれますよ~」
「はは……」

 そんなことが出来る性分ではない。
 要領が悪いのは、自分が一番よくわかっている。

(異世界を救ったって、この世界ではな~んの役にも立たないんだよなぁ……)

 就活のときにも、学生時代に打ち込んだことはと訊かれて「異世界を魔王の手から命がけで救いました!」と事実を答えられたらどんなにいいかと思ったけれど。
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