再びの異世界、可愛かった皇子様が俺様竜帝陛下になってめちゃくちゃ溺愛してきます。


「先ほどはすみません、コハルさま……」

 ローサたちが部屋を出て行ってすぐにメリーに謝られて私は慌てる。

「え、いや、メリーは何も悪くないよ。私が気を付ければいいだけ。それより、メリー」
「はい?」
「昨日、ここに小箱が置いてなかった? 中にブローチが入った」

 エルからもらったブローチを、昨日ソファ前のテーブルに置いたままだったことを思い出したのだ。
 でも今はそれが見当たらない。

「あ、メリーが昨日そこの引き出しに仕舞っておいたのです!」
「ありがとう、メリー!」

 メリーが差した棚の引き出しを開けると確かに繊細な装飾の施された小箱が入っていてほっとする。

「メリー、それが妖精王さまからの贈り物だとすぐにわかりました」
「そうなの?」
「その石は“妖精の瞳”と言って、妖精の国でもとても希少な宝石なのです!」
「そうなんだ……」

 小箱を開けて改めてその綺麗な翡翠色の石を見つめる。
 最初見たときエルの瞳と同じ色だと思ったけれど、あながち間違ってはいなかったのだ。
 ……エルは、何かあったらこれに呼びかけてと言っていたけれど。

(よっぽどのことがない限りはここに仕舞っておこう)

 これのせいでまたあらぬ噂が立ってもいけない。
 私はもう一度その小箱を引き出しの奥の方に仕舞い込んだのだった。

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