再びの異世界、可愛かった皇子様が俺様竜帝陛下になってめちゃくちゃ溺愛してきます。
これまで何度メリーにこの癒しの魔法を掛けてもらったかわからないけれど、本当に素晴らしい力だ。
(向こうの世界にもこの魔法があったら、もっと効率よく仕事出来てたかもしれないのになぁ)
そこまで考えて、ハっとする。
――もう、向こうの世界には帰れないのだった。
「コハル様?」
「……よしっ!」
私は暗い考えを振り切るように気合を入れてソファに向かった。
ソファ前のテーブルには昨日セレストさんと作ったアルファベット表が置いたままになっていて。
――やっぱり、考えすぎは良くない。
ティーアからの手紙のことは次の知らせが来るまで忘れよう。
答えが出ないことであれこれ悩むより今はひとつでも多くこの世界の文字を覚えようと、私は朝からそのアルファベット表を睨んだのだった。