再びの異世界、可愛かった皇子様が俺様竜帝陛下になってめちゃくちゃ溺愛してきます。
そんなことを考えながらふらふらと席に戻ろうとしたときだった。
「うっわ、お前最悪じゃね?」
「性悪ぅ~!」
「だって~、2つしか違わないのにいっつも年上ぶってきてさ~、正直ウザかったんだよね~~」
足が動かなかった。
あれは多分、いや、確実に私のことだろう。
(……まぁ、もうどうでもいいし)
少し時間をあけて、話題が変わったのを見計らって私は席に戻った。
「せんぱ~い、大丈夫ですか~?」
「うぅ……」
完全に悪酔いした。
店の外に出て、座り込みたいのを必死に耐えなんとか立っている状態だった。
早く、うちに帰って横になりたい。
そのまま明日の昼過ぎまでゆっくり眠りたい。
「先輩さんて、家どこ?」
そう訊いて来たのは先ほど向かいの席だった男の子だ。
最初に自己紹介されたけれど名前は全く覚えていない。
「俺、送ってくよ」
そう言ってくれたけれど、ふるふると首を振る。
「ありがとう。でも、大丈夫。ちゃんとひとりで帰れるから……」
「いや、ふらふらじゃん」
そうして笑いながら彼はいきなり私の腰に手を回してきた。
ぞわりと全身に鳥肌が立って、私はすぐさまその手から逃れる。
「さわらないで」
「え~、支えてあげただけじゃんね」
するとそれを見ていた後輩がクスクスと笑った。
「あ~佐久良先輩、全然男慣れしてないみたいだから、優しくしてあげくださいね~?」
「そうなの? ますます俺好みかも~。じゃあ、思いっきり優しくしてあげるね、先輩さん」
そうしてもう一度こちらに手が伸びてきて、もう色々と面倒だなぁと思った、そのときだった。
ぱしっと、その手を止める手があった。
「俺の妻に、気安く触れないでもらおうか」
そんな聞き覚えのある低音と共に、私の前に長身の影が立った。