再びの異世界、可愛かった皇子様が俺様竜帝陛下になってめちゃくちゃ溺愛してきます。
その日の午後、私の前に懐かしい人物が現れた。
「リュークレウス竜帝陛下、聖女コハル様、この度はご婚約おめでとうございます」
「カネラ王子!?」
今朝セレストさんから砂漠の国から使者がやって来るという話はあったけれど、謁見の間に入ってきたその姿を目にして私は思わず椅子から立ち上がっていた。
――カネラ王子、彼は「砂漠の国」の王子様だ。
砂漠の国には確か王子様が十人くらいいて、彼はその中の三番目の王位継承者だったはず。
7年前、私が「砂漠の国」を訪れたとき歳が近かったのもあって一番お世話になったのが彼だ。
明るい金髪に褐色の肌、眠そうな目は相変わらずだけれど、あの頃に比べて身体つきもがっしりして随分頼もしくなった気がする。
そんな彼が私を見て微笑んだのがわかった。
「お久しぶりです、コハル様。またこうしてお会い出来て嬉しい限りです」
「!」
まさか、あのカネラ王子からそんな言葉を掛けられるなんて思わなくて一瞬反応が遅れてしまった。
「――あ、えっと、私もです」
そうしてなんとか笑顔を作る。
あの頃のカネラ王子は、なんというか、言い方は悪いけれどいつもぼーっとしていて感情のわかりにくい人で、決して「また会えて嬉しい」なんて言って微笑むようなタイプではなかった。
だからびっくりしてしまったのだ。