再びの異世界、可愛かった皇子様が俺様竜帝陛下になってめちゃくちゃ溺愛してきます。
第52話
「コハルさま、海が見えてきたのです!」
メリーのそんな嬉しそうな声で私はハっと目を開けた。
馬車は想像以上に揺れて乗り心地が良いとは言えなかったけれど、いつの間にかうつらうつらしてしまっていたらしい。
焦って顔を上げると向かいに座るカネラ王子はまだ気持ち良さそうに口を半開きにして眠っていてホッとする。
王子は出発して間もなくこくりこくり船を漕ぎ出して、それを見ていたらこちらまで眠たくなってきてしまったのだ。
(こんなに揺れてて良く眠れるなぁと思ってたのに……慣れって怖い)
「港も見えたのです、コハルさま」
窓に顔をくっつけていたメリーがもう一度声を上げて、私も窓際に移動して向かう先を見やる。
すると確かに真っ青な水平線と、数日前リューに抱えられて空から見下ろした港町が見えた。
(あの時みたいに空を飛んでいけたらもっと早く着くんだけどなぁ)
傾きかけた陽を見て、ついそんなことを考えてしまった。
でも仮にリューが同行出来たとしても、さすがの彼も私とローサとカネラ王子を一度に抱えて飛ぶのは不可能だろうし、そんなことお願い出来るわけない。