再びの異世界、可愛かった皇子様が俺様竜帝陛下になってめちゃくちゃ溺愛してきます。

 この世界にまだ飛行機など空を飛ぶ乗り物は存在しない。 
 子供の頃に観たファンタジー映画のように竜の背中に乗って飛んで行けたら最高なのだけど、この世界の竜は、特にこの『竜の国』では神様のような存在で、その背に乗るなんてきっと罰当たりな行為だろう。

(と言っても、私本物の竜ってまだ見たことないんだよな)

 ゲームに登場するようなドラゴンに似たタイプの魔物は7年前に嫌と言うほど見たけれど、あんなものは竜ではないとリュー皇子に怒られたことを覚えている。
 でもこの世界に実在するのは確かなようだし、出来るなら会ってみたいと思う。

(帰ったらリューに訊いてみよう)

 と、向こうに帆船の真っ白な帆が見えてきた。
 これからあれに乗って砂漠の国に向かうのだ。
 こちらの世界の船の動力は“風”。蒸気機関などのエンジンがついているわけじゃないから風向きや天候に大きく左右される。
 それによく揺れるのだ。

(また船酔いしちゃうかな……)

 想像したら胃の辺りがもやもやしてきて慌てて深呼吸をする。

「コハルさま?」
「あ、ううん、なんでもない」

 首を傾げたメリーを見て、そういえばメリーの癒しの魔法が船酔いに効くんじゃないかと思いつく。

(もしものときはお願いしてみよう)

 少し希望が見えてきたところで、そろそろ王子を起こした方が良いかもしれない。
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