再びの異世界、可愛かった皇子様が俺様竜帝陛下になってめちゃくちゃ溺愛してきます。
「カネラ王子、そろそろ着きますよ」
そう少し大きめの声をかけると彼は「ふぁ」とか変な声を上げてぼんやりと目を開けた。
その視線が私を見て、それからゆっくりと窓の方を向いた。
「あ〜寝ちゃったかぁ。昨日、なっかなか眠れなくてさぁ~」
言いながら彼は大あくびをした。
「そうだったんですね」
「自分でもびっくりした。枕が変わって眠れないなんて神経が俺にもあったんだ~って」
返答に困ってハハハと苦笑しているときだった。
「!?」
馬のいななきと共に馬車が急停止して危うく王子の方につんのめりそうになった。
王子はごんっと音を立てて後ろの壁に頭をぶつけていて、いたたと呻いた。
「なに?」
「わ、わかりません」
と、馬車の扉が少しだけ開いてローサが顔を覗かせた。
「申し訳ありません。賊が出ましたので少々お待ちください」
「賊!? えっ、大丈夫なの!?」
「ご心配なく」
ローサはにこりと笑ってすぐに扉を閉めてしまった。
まさか、この竜の国に賊が出るなんて考えてもいなかった。
「ローサひとりで大丈夫かな」
「まぁ、そのための護衛だし」
カネラ王子が後頭部をさすりながら全く緊張感のない声で言う。
窓に手をついて外を見ると、確かにガラの悪い見るからに悪人面の男たちが数人、馬車の行く手を阻むように立ちはだかっていた。