再びの異世界、可愛かった皇子様が俺様竜帝陛下になってめちゃくちゃ溺愛してきます。

「あー、ひょっとして聖女サマの子? 竜帝にめっちゃ似てるし」
「ち、違います!」
「俺は竜帝の弟だ。名をリュークラウス。竜帝に言われ俺も同行することになった。よろしく頼む」
「え、そうなの?」

 カネラ王子が驚いたようにこちらを見てきたけれど、私に訊かれても困る。
 というかちゃっかり偽名まで用意しているリューにいっそ呆れてしまう。しかも一文字しか変わってないし。

「まぁ、別にひとりくらい増えてもこっちは構わないけど。あー、とにかく陽が落ちる前に出航したいっていうから早くこっち来て」

 そうして彼は手招きをしながらまた船の方へと戻っていく。

「行きましょう、コハル様」
「え、でも」

 ローサにも促され、でも本当にリューも一緒に行っていいのだろうかと逡巡していると、ぎゅっと手を握られた。

「ほら行くぞ。コハル」

 小さな彼に手を引かれ、その瞬間7年前の思い出が目の前に蘇った。
 彼と過ごしたハラハラドキドキしたあの日々が、鮮明に。
 そして、不覚にも胸が高鳴ってしまった。

(ごめんなさい。セレストさん……!)

 きっと今頃大慌てしているか怒っているだろう彼に心の中で謝罪しながら、私はリューの小さな手を握り返し『砂漠の国』の船へと向かったのだった。

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