再びの異世界、可愛かった皇子様が俺様竜帝陛下になってめちゃくちゃ溺愛してきます。
第56話
「コハルさま! 『砂漠の国』が見えてきたのです!」
そんなはしゃいだ声で目を覚ました私は、ハンモックから下りてメリーの貼り付いている小窓を覗いた。
確かに、朝もやで霞んだ水平線上にうっすらと大陸らしきものが見える。
竜の国を発って6日目の朝。
どうにか無事砂漠の国に到着できそうだ。
(やっと船酔いから開放される……!)
あれからも海が少しでも荒れれば船酔いに襲われ、その度にメリーに癒しの魔法を掛けてもらったり甲板に出て外の空気を吸ったり、ここ数日本当に陸地が恋しかった。
「甲板に出てみようか」
「はい!」
もうひとつ掛かったハンモックでは小さなリューがまだスヤスヤと寝息を立てていて、起こすほどのことでもないので私はそのまま静かに部屋を出た。
ちなみにリューと一緒のハンモックで寝たのは初日だけ。2日目からは別々のハンモックで寝ていた。
リューは最初不服そうだったけれど、一応今は“竜帝の弟”ということになっているのだ。一緒に寝ているところを誰かに見られてあらぬ噂でも広まったらどうするんですかと言ったら渋々納得してくれたようだった。